創業1879年。開拓船の船長だったグスタフ・ニーバムにより、スコットランドの言葉で「囲炉裏」を意味するイングルヌックという土地でブドウの栽培を開始。1887年にはナパ・ヴァレーで初めてとなるグラビティ・フローを採用した運搬設備やカリフォルニア初のブドウ選別台、瓶詰めラインを完備した醸造設備を完成。その後1889年、パリ万博で銀賞を受賞するまでに成長。そして1999年、当時ワイン・スペクテーター誌の編集者だったジェームス・サックリング氏が選定した「20世紀で最も偉大な12本のワイン」に、シャトー・マルゴー1900年やロマネ・コンティ1937年といった錚々たるワインと並び、イングルヌック1941年が選出されるという快挙を成し遂げた。
順風満帆だったが、経済的事情からワイナリーを売却。しかし、ゴットファザーで知られている、映画監督フランシス・フォード・コッポラ氏がワイナリーを購入後、2011年に商標権を取り戻したことで完全復活。
また、同年シャトー・マルゴーで20年以上のキャリアを誇るボルドーワインのスペシャリスト、フィリップ・バスコール氏が総支配人に就任。フィリップ氏はマルゴーで長年培ったノウハウを活かし、2013年から大胆な変革を実施した。
栽培では、剪定の時期を早めキャノピー(樹冠)を縮小させ収量を増やした。また、収穫を早め、よりフレッシュな酸味を持ったブドウを収穫する手法へと転換。醸造に関しては新しい除梗設備を導入したことでブドウの酸化を抑制。純粋な個性が表現されたアロマの抽出が可能に。また、ポンピングオーバーを実施するタイミングもブロックごとのワインで変更。その結果、過度な色素やタンニンの抽出が抑えられ、最終的なワインのバランスやストラクチャーの質も更に向上。こうしてフィリップ氏の手腕によって出来上がったワインは、ジューシーな果実味がありながらもタンニンはしなやか、綺麗な酸味がしっかりと感じられるスタイル。また、驚くほどフィネス溢れる逸品に仕上がり、世界中のワインラヴァーを魅了している。