レ・カルム・オー・ブリオンは、ボルドー市に畑の区画がある唯一のシャトーで、10haを超える畑を所有しています。メドック格付け第一級シャトー、オー・ブリオンとグラーヴ格付け特級のラ・ミッション・オー・ブリオンの向かいに位置していることから、それらのシャトーと基本的に同じ気候条件でブドウは育ちます。また、かつてはレ・カルム・オー・ブリオンはオー・ブリオンの一部だったという経緯もあることから、オー・ブリオンと同じ恵まれた土壌を持つ素晴らしい畑です。さらに、春の霜から守られブドウが早く成熟するという、特異なミクロクリマ(微気候)も備えています。
歴史的にみると、1854年から1789年の間はカルメル会修道院が所有しており、フランス革命後、ボルドーのネゴシアンだったシャントカイユ家が買収。19世紀初めにシャトーと3haの庭園が造られました。その後、2010年末に地元アキテーヌ地方の不動産開発業者のパトリス・ピシェがシャトーを買収し、大量の資本を投下した改革を計画。 更なる品質の向上を目指してプドウ畑の改善や新たなセラーの建設などを行っています。
また、それらの改革と共にシャトーの可能性を引出しカタチにしているのが、コンサルタントのステファン・ドゥルノンクール氏とディレクターのギョーム・プーティエ氏です。ステファン氏は、カベルネ・フランの比率を高めることでよりエレガンスを追及。カベルネ・フランは熟しにくい品種ですが、気候変動に負けないフレッシュ感をもたらすため、どのシャトーも比率を上げています。ボルドー右岸で使われることが多い品種ですが、レ・カルム・オー・ブリオンは市街地であることから、他のシャトーより気温が3度高いため、熟しやすいという特徴を持っています。そして、フィガロ紙の2023年≪フランス最高の50人のヴィニュロン≫の1位を獲得し、30年のワイン造りのキャリアを持つギョーム氏は、ボルドーでは珍しい最大40%までの全房発酵の導入やアンフォラ(陶器の器)やセラミックでの熟成など、従来の方程式を捨てて、10年がかりで現在の個性的な手法を完成させました。変革と挑戦を恐れないこの二人の情熱が、シャトーのスタイルにより一層磨きをかけているといって間違いないでしょう。