ジュヴレ・シャンベルタンに本拠を置くドメーヌ・ドニ・モルテは、ブルゴーニュの中では比較的歴史の新しいドメーヌで1990年代初頭に設立されました。非常に良いヴィンテージを次々と生み出したドメーヌのワインは、当時のブルゴーニュ愛好家たちのレーダーにすぐにかかり、今でもジュヴレ・シャンベルタンのトップドメーヌとして君臨しています。
ドニ・モルテは、父シャルルのドメーヌでワイン造りのキャリアをスタートし、1980年代半ばにワイン造りを引き継ぎました。1993年、ドゥニが父の後を継ぎ、ドメーヌ・ドゥニ・モルテを設立しました。
当初はジュヴレ・シャンベルタン、シャンボル・ミュジニー、ヴージョの4.5haからスタートし、その後、いくつかのプルミエ・クリュの畑、1999年にはシャンベルタン・グランクリュの区画を取得し、ドメーヌは着実に成長していきました。現在では、ジュヴレ、フィクサン、マルサネ、シャンボール・ミュジニー、ヴージョなど14のアペラシオンに16ヘクタールを所有しています。
父親から引き継いだ畑をオーガニックに転換し、収量を厳しく減らしました。また、ジュブレ・シャンベルタンでは、ルソーと並んで最も早くグリーン・ハーベストを導入。1993年にはいち早く選果台を導入するなど、ほかの生産者に先駆けて多くの手法を導入したパイオニアでもあります。
アンリ・ジャイエや、マダム・ルロワとも親交があり、彼らの存在は、ドニのワイン造りに影響を与えています。
亜硫酸不使用で、オリ引きをせず、新樽100%で18か月間、オリとともに熟成した彼のパワフルで色彩豊かでモダンなスタイルのワインは、当時の人々を魅了し、瞬く間にトップ生産者としての地位を確立しました。
ドゥニの息子であるアルノー・モルテは2000年にドメーヌに加わり、1999年ヴィンテージからドゥニと一緒に仕事をしてきました。彼hあ、メオ・カミュゼやドメーヌ・ルフレーヴで研修を受けた経験を持っています。その6年後に早逝したこの偉大な父親の後を継ぐこととなり、現在は、母のローレンス、妹のクレマンスとともにドメーヌを運営しています。
アルノーは自分のスタイルを少しずつ主張し、ワインのスタイルを巧みに進化させています。新樽の使用比率を40%以下に減らし、より穏やかな醸造によって抽出と熟成を洗練させ、以前よりもフレッシュでフィネスとエレガントなワインを生み出すようになりました。
ドメーヌは、1996年以降、化学的な除草剤と肥料を禁止し、さらにアルノーは2008年から有機農法の実験を開始しました。現在、ブドウ畑はリュット・レゾネで栽培されています。
更にアルノーは、土壌の構造を守るために父親よりも耕す量を大幅に減らしており、窒素の放出を少なくすることで、果実を大きく成長させないように工夫しています。彼は、果実が小さい方が果汁と果実の比率がより高くなると考えています。
土壌の圧縮を避けるため、ほとんどのブドウ畑での剪裁は手作業で行われています。
アルノーは今でも、ブドウの成熟度を厳しくチェックしながら、ブドウ栽培を行っており、収穫の際には特注のベルトコンベアーでブドウを3回に分けて選別します。
2008年には、ドメーヌのために特別に設計された除梗機が導入され、アルノーは初めて全房で醸造しており、以降、ブドウ畑やヴィンテージによって異なりますが、基本的なキュヴェ以外はすべて全房で発酵させてます。
ステンレス製のタンクで自然酵母による発酵を行い、発酵期間は通常18日から20日ですが、シャンベルタンのような少量生産のワインは14日程度です。パンチダウンは5、6回程度。
ワインとヴィンテージによって、熟成期間は16ヶ月から18ヶ月です。現在、新樽はほとんど使用されていません。ワインは無清澄、無濾過でボトリングされます。
父の遺志を継承しながら、自分のスタイルに磨きをかけたアルノーのワインについて、VINOUSのニール・マーティンは下記のように述べ、賛辞を送っています。
「モルテのワインはしばしば呪術的な創造物であり、継ぎ目のないテクスチャー、繊細なタンニン、魅惑的な果実の純粋さで瞬時に誘惑するスリリングなワインである。」-ニール・マーティン、ヴィノス